相続税申告
2024.07.02
小規模宅地等の特例について(その一)

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小規模宅地等の特例とは、小規模な宅地について、一定の要件を満たす宅地等については最大80%評価額を下げて相続税の負担を軽減できるという制度です。これだけ大きな減額割合ですので、その要件を満たすには厳しい条件をクリアーすることが要求され、また、その要件も複雑なものとなっています。
小規模宅地等の特例の対象となる宅地等
小規模宅地等の特例の対象となる宅地等は、大きく分けて次の4つに分類されています。
①特定居住用宅地等
亡くなった人の自宅として使っていた宅地等に対する特例
限度面積330㎡ 減額割合80%
②特定事業用宅地等
亡くなった人の個人事業(貸付用を除く)として使っていた宅地等に対する特例
限度面積400㎡ 減額割合80%
③特定同族会社事業用宅地等
亡くなった人の会社(同族会社)として使っていた宅地等に対する特例
限度面積400㎡ 減額割合80%
④貸付事業用宅地等
亡くなった人が貸地又は貸家など貸付用としていた宅地等に対する特例
限度面積200㎡ 減額割合50%
今回は、上記4つの分類の内、亡くなった人が自宅として使用していた宅地等を対象とする「特定居住用宅地等」(上記①)について解説します。
特定居住用宅地等について
亡くなった人が住んでいた土地について、「特定居住用宅地等」の要件を満たす取得者は「配偶者・同居親族・家なき子」の三者となります。
まず、「配偶者」は、無条件で要件を満たす取得者に該当します。
次に「同居親族」は、亡くなった人と同じ家に住んでいた親族が要件を満たす取得者に該当します。ただし、二世帯住宅(区分所有)の居住形態の場合は要件を満たさないケースもありますので注意が必要です。
また、「家なき子」は、第三者所有の建物に賃貸暮らしをしている人が要件を満たす取得者に該当します。ただし、この場合は、その要件が次のとおり複雑となっています。
- 居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた被相続人の相続人がいないこと
- 相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の3親等内の親族または取得者と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋に居住したことがないこと
- 相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと
- その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで所有していること
なお、「特定居住用宅地等」の特例は、上記の他に亡くなった人と生計を一にする親族(亡くなった人と同じ財布で生活していた家族)が、亡くなった人所有の住宅に住んでいた場合も特定居住用宅地等に該当するとされています。
この場合、その要件を満たすのは「配偶者と生計を一にする親族」の二者になります。
また、小規模宅地等の対象となる宅地等を相続税の申告期限まで保有することが要件になっていますので、その前に売却すれば特例は受けられません。ただし、無条件で特例の適用を受けられる配偶者は相続税申告期限前であっても対象の不動産を売却することができます。しかし、相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等は、小規模宅地等の特例の適用対象外となります。
そして、亡くなった人が生前に老人ホームに入居していた場合でも、一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例の適用を受けられますので知っておくと良いでしょう。
税の専門家にご相談ください
このように、小規模宅地等の特例の適用については、その要件の解釈が大変難しいため、税の専門家に相談されることをお勧めいたします。
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